芸術の世界とのコラボレーション
時計造りとアートとの接点は多様です。時計デザイナーたちはおのずと現代の芸術に敏感であり、自分たちの作品に現代芸術から偉大なインスピレーションを吹き込もうとしています。時としてアーティストや職人達は時計の文字盤にさえも作品を描こうとします。こちらがいくつかの例です。
建築
時計博物館の起源は、現代デザインの初期にアーティストのグループがシンプルラインの使用と機能主義に代表されるバウハウス・スクールを創設した時代に遡ります。1947年アメリカ人アーティスト、ネイサン・ジョージ・ホーウィット氏がデザインした時計博物館は、現代デザインの純粋な表現です。ホーウィット氏は彼のアプローチを次のような言葉で表現しています。「私の役割は、何よりもまず、その対象物を可能な限り最も効率的に使用する方法を理解することです。その後、その使用を強調した形をイメージしました。」ブラック・ダイアルと12時位置に単一の金のドットをあしらったミュージアム・ウォッチは、天頂の太陽を表現し、いっぽう針は地球の動きを表しています。1960年ホーウィット氏の文字盤はニューヨーク近代美術館のコレクションに加えられました。それゆえにその名はミュージアム・ウォッチです。
ペインティング
スウォッチ&アートコレクションは1985年パリのポンピドー・センターでアーティストのキキ・ピカソ氏がデザインした時計で発表されました。スウォッチは80年代を通じてミンモ・パラディーノ氏、サム・フランシス氏、そしてアルフレッド・ホフクンスト氏といったアーティストとのコラボレーションで同コレクションの発表を続けました。しかし最も印象的な作品は、間違いなくキース・へリング氏がアーティストとして1986年に作成したものです。
技術
時計デザイナーのエリック・ジル―氏と協力して考案された、MB&Fによる最初のオロロジカル・マシン “HM1”は様々な影響を受けてます。この時計はかなり複雑です。本来の時計製作につきものの技術的制約を別として、ローターやトゥールビヨン・ケージは、SFアニメーション(Goldorak’s astero battle axe)から発想を得ています。一方でトゥールビヨンはアブラハム・ルイ・ブレゲにより製作されたポケットウォッチが参考となっています。2つの円が重なるダイアルの形は、2つの世界を象徴しています。そしてムーブメントはこの八の形をもとに開発されました。
アートと工芸
ブランドの伝統と特性をもとに、ヴァシュロン・コンスタンタンは、微細画における真の芸術作品を製作するためにアートと工芸に力を入れています。エングレーバーは、装飾する要素を三次元に転写するため素材を切り刻みます。ギョーシェ職人は旋盤のハンドルを片手で回し、装飾する部品を操作します。もう一方の手で、たがねの付いた台を押して、細かく規則的な線を彫ります。エナメル職人は筆を使い絵柄または細密画を文字盤に描いたり、修復を行います。時として インスピレーションの新しい源泉に遭遇することがあります。2010年に誕生した象徴的な漆コレクションは、漆で模様を創作するために金粉や銀粉を散りばめる日本の蒔絵の技法を使用したものです。